12.スペクトル解析の方法

 スペクトル解析:信号の周波数成分を推定する

 パワースペクトルを推定する方法

 (1) 相関関数法(B−T法)

  自己相関関数を計算し,それをフーリエ変換して,
  パワースペクトルを推定する方法

 (2) FFT法(直接法,ピリオドグラム法)

  時系列データを直接フーリエ変換して
  パワースペクトルを求める方法

 (3) 線形予測モデル法
 
  観測信号を,ある線形系の出力と見なして,
  線形モデルをあてはめ,その周波数特性から,
  パワースペクトルを推定する方法





良いスペクトル推定の条件

 (a) データ数を増していったとき,推定値が真の
  スペクトルに近づき,しかも推定値の分散も
  小さくなること

 (b) 必要なスペクトル分解能が得られること

 (c) 計算時間が短いこと


13.相関関数

相互相関関数

 2つの関数の相関を求める
 つまり,2つの信号がどの程度類似しているか,
 あるいは,2つの信号が時間的にどれぐらい
 ずれているか,を調べる

 の時間軸をそのままにして,の時間軸を
 τだけずらして,区間で両者の内積をとる

 

 この相関値は時間軸でのずれτを変数に持つ
 関数となり,相互相関関数という

 この関数を2つの関数のノルムで割ったものが
 規格化相互相関関数になる

 


自己相関関数

 関数どうしの相関を求める
 つまり,に含まれる周期性を調べる

 関数と,の時間軸をτだけずらした関数の
 区間での内積をとる
 すなわち,関数自身との相互相関関数を求める

 

 この関数を自己相関関数という

 また,規格化相互相関関数は

 


離散データでの相互相関関数の求め方

 観測データ(元データ)
  
  
  ずらすデータの最大値をmとする
  (すなわち,のデータを使用)

 平均値
  

 偏差データ
  
  

 相互相関関数
  

 規格化相互相関関数
  

  ただし
  


14.線形予測モデル法

 データを生成している時系列モデルを推定し
 そのモデルからスペクトルを計算する方法

 手順

 (1) 時系列データに対して,線形予測モデルを仮定し
  そのパラメータを時系列データから推定する
 (2) モデルに推定したパラメータの値を代入して
  スペクトル推定値を得る

 モデルの一般形

 時系列信号を,ある線形系からの出力であると
 考えると,その関係は次のように表現できる.

 

 ただし,

 現在の出力が,過去の出力および現在・過去の
 入力信号の線形結合として表されることを意味する  
 が過去の入出力により予測されることから,
 線形予測モデルと呼ばれる


自己回帰モデル(ARモデル)
 
 
 

 過去の出力のフィードバックにより現在の出力が決まる
 (を次数という)

移動平均モデル(MAモデル)

 
 

 過去時点までの入力系列の重みつき平均で,
 現在の出力が決まる

自己回帰・移動平均モデル(ARMAモデル)

 

 自己回帰モデルと移動平均モデルを組み合わせたもの

 ARモデルがスペクトル推定に最も多く使われる
  効率的な計算アルゴリズムが見出されている
  統計理論による裏付けがある(最大エントロピー法)


最大エントロピー法(MEM)

 有限な測定データから,それだけでは測定不可能な
 大きな周期を持つ自己相関関数を,情報エントロピーが 最大となるように推定することにより,
 スペクトルの推定を行う方法
 (エントロピー:無秩序さ,不規則さの程度を示す
   本来は熱力学の用語)

 長所
  短い測定時間で高分解能にスペクトルが推定できる

 短所
  計算時間,メモリ容量で劣る
  自己回帰モデルの次数の決定が困難

 測定データに比べて周期が長い場合
 (気象,地球物理など)に有効


 パラメトリック
  いくつかの未知パラメータを,観測データをもとに
  最適に決定する

 ノンパラメトリック
  モデルを仮定したり,パラメータを推定したり
  しない