シミュレーション工学

Nr. 11





小堀

「認知科学・人工知能分野でのシミュレーション」

1.概要


認知科学
 計算機を用いて人間の認知過程をシミュレートすることによって,
 人間の心の構造と機能を解明する
 →人工知能の新たな手法を示唆する

人工知能(工学的立場=狭義)
 人間と同じような知的問題解決を行う情報処理システムを作る
 →人間の認知過程を考慮する必要がある

情報処理的アプローチ
 生体(人間)を情報処理システムとして理解しようとする方法
  生体=情報の処理を通じて環境との相互作用を行うシステム

システム的立場
 「合成による解析(analysis by synthesis)」→シミュレーション
 情報処理モデルを構成し,それに基づいて認識や行動のしくみを説明する
 生体の機能から構造を同定する(トップダウン的アプローチ)

計算機との類推
 ハードウェア:脳神経系
 ソフトウェア:遺伝情報,知識→心

情報の表現と処理
 脳のモデル
  神経回路(ニューラルネットワーク)システムが基本
  時空間的に分散した情報を処理
 心のモデル
  記号処理システムが基本
  時空間的に局所化された情報を処理→記憶,思考,言語などの機能

例:記憶の2貯蔵庫モデル
   短期貯蔵庫と長期貯蔵庫

[IMAGE image/sim11-1.gif]


2.脳のモデル


形式ニューロンモデル(マカローとピッツ)
 空間的加算と閾値処理だけに単純化したもの
 しかし,計算能力は汎用計算機と同等

  ただし,

[IMAGE image/sim11-2.gif]

神経回路網のモデル
 ニューロンに対応した多数のユニットを結合させ,ネットワークを構成
 フィードバック結合を含むか含まないか,
 さらには,階層的であるか,相互結合的であるか,
 などにより,分類される

3.心のモデル


情報(記憶)の表現
 記号表現
  記号処理モデル
   1つの対象を1個の記号に対応させる
  宣言的記憶→意味ネットワーク表現,スキーマ表現
  手続き的記憶→プロダクションシステム
  学習→適応プロダクションシステム

 パターン表現
  局所表現
   1個のニューロンによって1つの対象を記憶する
   →認識細胞(おばあさん細胞)仮説
  分散表現
   多数のニューロンに分散して情報が保持される
   →パターン仮説
  スパース表現
   一部のニューロン群にわたって表現される

  並列分散処理(PDP)モデル,あるいは,コネクショニズム
   ニューラルネットワークを用いた分散表現に基づく情報処理モデル
   脳神経系のモデルではなく,心のモデルである
   従来の記号処理モデルに対するもの

参考文献
 安西祐一郎他著:岩波講座・認知科学2・脳と心のモデル(岩波書店)


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